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歪められた攻撃(劣敗の叫び) 


吠える、騒ぐ、噛む、暴れる犬。


狂ったと思われる犬のお話です。狂った手に負えない犬とは、人間世界からの一方的
な見方で犬の状態を見ようとする態度では、その犬の発するメッセージを世界を二分化
する態度
(人間世界と自然世界を勝手に分離、合体する。自然世界から人間は特別な
ものとして取り扱う考え。)
では受け取ることが出来ないのです。当然、そうした犬への
対処は出来ず、ただ困惑し悪い状態が続くのです。こうした問題犬は意外と愛犬家、犬
                          を大切にする極めて平和な家庭から生じます。

犬は人に飼われている。人との関係で、その存在の在り方が決定します。犬は人から
与えられた環境の中で生き続けて来ました。その環境の良し悪しは、犬の生態状況を
決定付けます。犬の運命は飼い主次第なのです。正しい飼い方を知らず、自分勝手な
  飼い方をした結果、こうした狂った犬の登場となるのです。しかし、そうした犬の飼い主
                はけっして悪い扱いや、悪い環境を与えた覚えはないのです。

  犬は人の嫌がることはしません。人の喜ぶことは率先して行います。ですから家族の
 一員として飼われてもいます。なのに何ぜ、このような問題犬が、平和な家庭から生じる
のでしょうか。その原因を、犬の習性と、その飼われている環境を考えてみます。    


攻撃

生物が生存しつづける為の闘争に、特に動物における闘争に攻撃行為がみられます。
  攻撃は他種(異種)に向けられるものと、同種(仲間)に向けられるものがあります。
他種に向けられる攻撃は理解できても、同種、仲間に向けられる攻撃は人にとっては、
異常、狂った行為と思われるのです。しかし、攻撃には、その必要性があり、その目的を
                                          考えて見ましょう。
攻撃の働き

動物の攻撃行為は内在する本能によるもので、生存し続ける為に必要なものなのです。
 まずその働きは、一、同種の生物を生活圏内に分布させること。(繁殖)
        二、ライバル闘争による淘汰。(種の劣性防止)
三、子孫の防衛(生活圏の確保)。
 採餌における*攻撃は別として、その行為の目的は、この三つの働きがあります。こうした
健全な働きの他に、同種間における歪められた争い、攻撃が生じる事があります。その
                           背景には暗い生活環境が見られるのです。
特に群れ(社会性)をなす非接触性動物には、暗い背景による歪められた攻撃が見ら
れる事があります。こうした集団の中に生じる不測の出来事を、これからお話します。

* 採餌における捕食行為は攻撃ではないと云う意味ではありません。
犬は著しくタンパク質が不足すると凶暴になると知られています。充分な
食事を与えているのにと不思議がる飼い主がいますが、それが最近の
流行のダイエット食を与えた場合そうした事例が見られます。タンパク質
 の不足は闘争的となり、その攻撃性は捕食行為への促進となるのです。
<詳しくは別記「笑えぬ犬」をご覧下さい。>


シンク状態

混み合いから生じる不測の出来事、シンク状態の発生。
シンクの語意、 1、沈む、下落する、 2、弱る、倒れる、 3、掘る、 4、台所の流し、下水溝。
こうしたことから転じて、腐ったものや、コミ容器のイメージにより、動物行動学者のカルフーン
は「行動のシンク」という言葉を用いて、この不健康な言葉は集団の中に生じる、あらゆる病的
                      な状態を悪化させるように働くことを示す実験をしました。

カルフーンのドブ鼠を使っての実験。  
まず、食料の取り出しに手間の掛かる区画(鼠達は、どの区画にも自由に出入り出来ます。)

ドブ鼠達を、この区画にオス、メス各20匹ほど入れます。闘争の結果(きわめて自然に)
 1 と 4 の区画に、オス 1 匹メス 7~10 匹のハレムを作り、2 と 3 の区画に、その他のオス
が集まります。もともと食料の取り出しに不自由ですから、 2 と 3 の区画では 2~3匹が
                             一緒に食事をしなければならないのです。

繁殖して、60匹を越すようになると、2 と 3 の区画ではシンク状態が発生します。

次に、水を飲むのに手間の掛かる区画(鼠達は、どの区画にも自由に出入り出来ます。)


前と同じように鼠達を入れます。闘争の結果(きわめて自然に) 3 と 4 の区画を一匹の
最強の鼠が独占します。2 の区画は、次の予備軍であり、1 の区画では、いきなり混み
                               合いの状態でシンク状態となります。
水は、鼠にとって目覚めた時に、すぐ飲むという習性があります。よって水の近くに寝る
                     そして水の近くには他を寄せ付けぬように争うのです。

このようにして生じた不測の事態、シンク状態の結果、次の事態が起こります。

 一、社会的機能の破壊。  二、社会的混乱。
三、個体群の崩壊。  四、大規模な死亡。 
    五、汎性愛やサディズムの発生。           

こうした状況の中での歪められた攻撃は、異種間の争いのように、相手を追い払うまでと
いうような、なま優しいものではなく、徹底的に追い詰めて殺す残虐性が見られます。特に
移動可能な動物、そして群れを成す非接触動物においては、こうした状態はその種の絶滅
                                         の危機ともなるのです。

犬は人に飼われる前は、群れを成す非接触性動物でした。それでは群れの動物と
                                 非接触性動物についてお話します。

群れとは
一つの種の個体が互いに反応しあい、ひとつ、あるいは多数の個体が他の個体の行動を
                                   解発することによって集い合うもの。

接触、非接触性動物とは
接触性動物(接触を必要とする動物) セイウチ カバ ブタ コウモリ インコ ヤマアラシ 等
非接触性動物(接触を嫌う動物) ウマ イヌ ネコ ネズミ ユリカゴメ クマ サル ヒト 等。


群れを成し、そして接触を嫌う犬は、ちょっとした飼い主の不注意による条件で、混み合いの
  状態、シンク状態になり兼ねません。そうした時の攻撃は制御されなければなりません。

攻撃の制御 スペーシングの機構
非接触性動物のスペーシングの機構。 個々の動物は(縄張りは別として)一連の目に見え
ぬ、泡(バブル)という不規則な形をした、バルーン(風船)のようなもので囲まれており、それが
個体間のスペーシング(間隔、間の取り方)そのものの維持に役立っている。ヘーデンガーは多
くの動物達が、何らかの形でこの意味に利用していると考える距離を記載した。         
                                    それらの距離は次の通りです。

逃走距離(異なる種の個体間の出会い)  異なる種が、ある一定の距離に近づくまでは
逃げださずにいる。逃げるということは移動出来る動物にとっては、生きのびる為の基本的な
機構です。動物園では新しく入園した動物は、あらかじめオリに近づく人に対して、その動物
がどのような恐怖に陥るか知っておく必要があります。こうした恐怖は精神分裂患者の「彼ら
自身の中に、何かが入って来た。」と述べる。逃走反応と似た恐怖なのです。この距離は、
                            縄張りとは違う他種との接触を嫌うものです。

臨界距離あるいは臨界距離帯  逃走距離と攻撃距離との間の狭い帯状の地帯を
いう。近づくと逃げようとする動物も、この地帯に踏み込めば反転して、侵入者に忍び寄りを
                            はじめ、なお踏み込めば攻撃となるのです。

個体距離 非接触動物の仲間との間(正常な間)。 この距離は動物の体を取り巻く見
えない泡(バブル)が作用します。社会組織は、この個体間を決める要素の一つです。
このスペーシングは劣性は優勢に席をゆずるの攻撃性の原則は、脊椎動物の心理構造の
本質的な要素であり、攻撃と誇示の間に一定の関係があり、より攻撃的になれば、より強烈
な誇示が見られます。しかし、種の存続を保証する為には同種内の攻撃は制御される  
                                必要があります。その方法は、二つ。

一、社会的順位を発達させること。 二、スペーシング(きわめて原始的)の簡単な方法です。


社会距離 社会性(群れを成す)の動物は、互いに接触を保っている必要がある(たとえ
それが非接触性動物であっても。)単に一個体が仲間との接触を失う距離、その限界を
    超すと、不安を感じはじめます。そうした心理的な距離のことを社会距離といいます。
スペーシング機構の働いた、程よい接触から離れて単一の個体となったとき、ある不安が
               生じるのです。その不安は、群れへと戻す心理的な帰省力です。


どのような大人しい犬でも、攻撃性は秘められており、その制御にはスペーシングの機構が
作用しています。犬はその昔群れを成し、強いリーダーの下に暮らしていました。人に飼わ
れるようになると、その家の主をリーダーとみなし人の家族の群れの中で現在は暮らして
います。犬は群れの動物で非接触性動物です。生存するために必要な空間は人から与え
られ、勝手に自分で確保は出来ないのです。攻撃の制御は、スペーシングの機構、個体
距離の社会的順位の厳しい経験から習性となり人に受け入れられ、家族の一員として  
生活空間を与えられ少しばかりの接触には我慢して暮らしています。しかし、その生活空間
が犬にとってその環境が,混み合いの状態(シンク状態) そして必要以上の接触に悩まされ
頼れるリーダーが不在だったら。歪められた攻撃、狂った犬が見られるのです。

ひとが良しと思って与えた空間が犬にとって、シンク状態の場であったら、例えば、リビング
ルーム(犬にとっては人の出入りの激しく不要なものの雑居状態の場)。そして犬を叱る人の
いない平和な社会的順位の穏やかな家庭。犬は家族から愛され常に接触を繰り返す、  
                このような環境にある犬は,問題犬となる条件を備えています。

このような環境で育てられた犬は、やがて六ヶ月が過ぎたころから、家族の繰り返す接触に
抵抗し反抗の成果を得ることにより次第に横暴な行動をとるようになります。その上リーダー
不在、落ち着いた休める空間が無い。繰り返される家族からの接触、この様な状況を知らず
                 知らずに作り出しているところに、問題犬の登場となるのです。

   不安な日々。

問題犬は、雑居(混み合い)の場所で,繰り返す接触(犬は非接触性動物)と
無秩序(リーダー不在)等の条件により健全な攻撃性が歪められ,その仲間へと
                                攻撃が向けられるのです。
  シンク状態,非接触性動物への接触、スペーシング機構社会的順位の崩壊、これらは
犬にとって暗い社会背景を作りだし,不測の出来事を生じさせる原因となるのです。

狂った犬達、問題犬は、最近きわめて一般的な平和な家庭から生じています。その優しさ
ゆえに問題犬を抱え戸惑います。愛犬家ゆえ、その犬の処分は絶対出来ぬのです。それ
ゆえ抱え込み危害に怯えます。問題犬を抱えた愛犬家は、その犬の処分か,あるいは飼い
主自身の自覚による犬のしつけ訓練の実践、そして日々の厳しい対応が求められるのです。
原因と結果を踏まえての犬の訓練の開始は良き方向へと進むことでしょう。しかし、その後遺
症は残ります。その後遺症に、どのように対応し共存していくかは、飼い主自身の責任です。
犬を飼う以上、犬の習性を理解して、犬は人と異なるゆえに犬として、子犬のころからしつけ
を行っておけばこの様な 事態は起きなかったのです。犬は太古の時代から、人間にとって
良きパートナーなのです。今でもそれは変わる事なく良きパートナーなのです。それを歪めた
のが飼い主の思い違いよる飼育です。狂った犬の「劣敗の叫び」を聞いてください。  以上。



  追記、映画「犬と私の10の約束。」の感動的なお話から、あなたも、愛犬に10の約束を誓う前に
 あなたの愛犬に3っつのお願いをしたら如何でしょうか。1、吠えるな 2、咬むな 3、暴れるな。
                     それを聞き届けてくれたなら、10の約束を守る愛犬家になlりましょう。






            富士山 49a   





                                 
                   
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